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薬剤師研修支援システム

ヒゲナミン 

2020年3月

専務理事 浦山隆雄

 

 2、3年前、突然、ヒゲナミンという物質が話題になった。従来から禁止されていたものではあるが、ドーピングの禁止物質として2017年禁止表国際基準に例示されたためであった。

 大学3年時の生薬学の講義で、天然物から化学物質を抽出し構造を決める話があった。いくつかのアルカロイドの例が出された。40年以上も前で、今のように分析機器が進歩していないから、分離精製した新物質の構造決定は苦労話である。そして、新たな物質を発見した人には、その命名権があるとのことであった。

 発見者が命名権を持つ、でも、まじめに付けなければいけないと教授が言い、そうでないという例を2つあげた。1つめは思い出せない。2つめがヒゲナミン。発見者がひげを生やしていたから。

 約3年前、研修認定薬剤師の認定申請数が激増した。それまで着実に生涯研修に取り組んできた薬剤師は支障なかったが、状況の変化で、急遽認定を受けなければならなくなった薬剤師は、混乱の極みであったろう。今、その更新申請の時期が廻ってきている。

 更新のためには年間最低5単位、3年間で30単位以上の取得が必要である。この必要な条件を知らない人がいる。認定を受けていながら、更新の条件を知らないというのは、まじめに生涯研修に取り組んでいるのかとの疑念が湧く。生涯研修は、ルールを掌握したうえで、日々の積み重ねによって成り立つものである。

 開催まであと半年に迫った東京オリンピックでも、ドーピング防止のために、厳格な検査が行われるであろう。ドーピングはルール違反である。しかも、ルールを知らなかったは、ドーピング違反の言い訳にはならない。薬剤師の生涯研修も、ルールをきちんと知ることが当然のことであり、第一歩である。

 今、情報処理技術は急速に進展し、AIも身近なものになってきた。かつて影も形もなかったパーソナルコンピュータは、今や日常のものになっている。人間でなければできないことは急速に減っている。すべての薬剤師が、様々なもののルールを知り、それに則って日々努力し続けるようでなければ、将来はないのではないかと危惧している。