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薬剤師研修支援システム

コンピュータでは代替できない薬剤師であるために 

2018年5月
慶應義塾大学薬学部 教授 望月眞弓 

 

 2018年3月21〜23日スウェーデンで開催された欧州病院薬剤師会(EAHP)に参加してきた。欧州ではメディケーションエラー対策やトレーサビリティのためのコンピュータ技術の導入が進んでいる。「The power of automation」というロボットシステムの薬局での導入事例を紹介するシンポジウムは、朝7:30からの開催にもかかわらず多くの参加者を集めていた。また、機器展示会場でも、調剤やデリバリー用のロボットが展示され、どのブースも盛況であった。

 2013年FreyとOsborneの報告1)によれば、コンピュータ技術の進展による様々な仕事のコンピュータ化の可能性は、薬剤師が0.012、薬局テクニシャンが0.92と報告されている。薬剤師に比べて薬局テクニシャンの数字は1に近く、2013年当時よりさらにコンピュータ技術が進展している今、テクニシャンの仕事はコンピュータにより置き換わることが現実味を帯びてきている。この調査で薬剤師よりコンピュータ化確率の低かった職種は、医師の0.0042、ソーシャルワーカーや作業療法士の0.0035、メンタルヘルス・薬物乱用ソーシャルワーカーの0.0031などがある。これらは「人」の気持ちに寄り添う必要性の高い仕事である。こうした職種がコンピュータで代替される確率は、薬剤師の1/10ということになる。

 薬剤師の仕事は「物」から「人」へと言われるようになって来ている(「物」を忘れてよいという意味ではない)。Freyらの報告1)とロボット技術やAIの進展は、まさに薬剤師に「物」から「人」へのシフトを後押ししている。では、私たちの役割はどう変わるべきであろうか。私は、長い間「医薬品の適正使用の推進」が薬剤師の使命であると考えて来た。しかし、これまでは「医薬品を使う」という選択をした後に関わることに注力してきたように思う。医薬品を使わないという選択、さらにはヘルスプロモーションを支援するという視点の重要性は今後ますます高くなる。薬剤師は、患者の状況に応じて、患者が正しい選択、正しい行動ができるように支援しなければならない。患者の状況には、患者の気持ちや家庭環境、そして経済状況なども含まれる。

 「健康サポート薬局」「かかりつけ薬剤師」が絵に描いた餅にならないよう、私たちが成すべきことを実行する時である。

 

 1) https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf 
, accessed on March 29,2018.