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薬剤師研修支援システム

患者のための分化・進化にチャレンジする薬剤師に期待します! 

2016年2月
厚生労働省大臣官房審議官(医薬担当) 森 和彦 

 

 今やほぼ70%までになった医薬分業は、昨年始めから社会的にいろいろな注目を浴び、現在の調剤業務の実態に対する厳しい批判もある一方、これまでの薬剤師の真摯な活動を評価し、これからの日本の医療におけるより一層の活躍・貢献への大きな期待も寄せられています。昨年秋には今後の薬局・薬剤師にとって極めて重要な報告書が次々に公表されましたが、今年からはその実現に向けて様々な取り組みが始まります。

   薬剤師の業務や医薬分業の実情に関する様々な意見や議論を背景として2015年10月に「患者のための薬局ビジョン」がとりまとめられ公表されました。薬剤師として患者のために日本の医療を支えて行く一人一人が、これから10年、20年先をどのように思い描き、どのような薬剤師として活躍しようとするかを考える上で、是非この薬局ビジョンを参考にして頂きたいと思います。

   また、近年の薬事法改正(医薬品医療機器等法に名称を変更)、薬剤師法改正において薬剤師の仕事、責務が明確化されたことも重要です。

  これらに共通するのは、薬剤師が一人一人の患者とよく対話し、服薬情報の一元的・網羅的把握に努め、それぞれの患者に相応しい適切な理解し易い服薬指導を心がけ、日々の調剤業務の中で実践する事です。これが如何に重要であるかは、医療現場で働く薬剤師の皆さんはよくご理解されていると思います。

  このような日々の実践の積み重ねにより、全ての薬剤師が「かかりつけ薬剤師」として患者から信頼され、頼られる存在になりましょうと薬局ビジョンは呼びかけています。さらに、かかりつけ薬剤師がその本来の業務を効率よく果たせるように薬局の構造設備・機能を改善・進歩させるため、経営者にも理解を得る必要があります。そのために今後予定される診療報酬改定においてもそのような観点からの見直しが行われつつあります。

  薬局ビジョンは「患者のための」と題していますが、薬剤師の仕事は国民が病気を抱える患者になってしまってからだけではありません。病気にならないために健康の維持増進や予防に取り組む国民を支援する健康サポート機能は非常に重要な仕事です。病気とまで言えない、軽度の身体の不調にOTC医薬品等で対処する際にも薬剤師が関わることで適切な医薬品を選択し、安全で効果的な使用が可能となる場合は数限りなくあると思います。

  また、がんなどの重い病気を抱える患者には、近年続々と登場する画期的な新薬も含めて高度で複雑な薬物治療が行われますが、初期段階では病院で入院して行われても、いずれは在宅で療養が行われます。在宅での薬物療法を支援する薬剤師の業務には高度な薬学的知識に加えて患者や家族との心のこもったコミュニケーションが不可欠です。薬局の中でも外(在宅療養の現場)でも高度な薬学的管理機能を発揮する薬剤師への期待が薬局ビジョンには盛り込まれています。

  これからますます高齢化が進む日本において、より質の高い医療を実現し、維持してゆくために、多様な医療現場のニーズに応えるべく、薬剤師が活躍する場は果てしなく広がっています。今年が、全ての薬剤師にとって国民、患者のために未来をめざしてチャレンジする一年となれば幸いです。