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薬剤師研修支援システム

新「4年制博士課程」への期待

2012年11月
東京大学名誉教授 廣部雅昭

 

 6年制薬剤師教育の成果が問われる最初の卒業生が社会に巣立った。最も注目された薬剤師国家試験の合格率は6年制卒約95%で従来の4年制新卒の80%台を大きく凌駕したとのことである。様々な“関門”をクリアし、“許可”を得て受験した結果であったとしても、新制度の理想を体現した“エリート”であることに間違いはなく、今後否応なく社会的評価の対象となる覚悟が必要であり、またその責任もある。しかし在学年限2年間の延長で十分である筈はなく、卒後の実地体験などを通じて、さらに高度で専門的な技術・知識を身につけ、患者はもとより医療チームの信頼に応えるべく不断の努力が必要であることは言うまでもない。本研修センターもそれらの支援機能を果たすことが期待されている。十全の薬剤師に求められている資質として最も重要な点の一つは、習得した知識や技術の本質を良く理解し、適確なアウトプットが出来ることであろう。言い換えれば基礎と応用が相互にフィードバックできる能力のことで、これは薬剤師に限らず、問題解決型人間に必須な研究者マインドである。

 

 さて6年制課程の先に新たに設置される「4年制博士課程」の実態が明確でないのは、未だ実績がないから当然であるが、逆にいえば今後如何様にも性格づけができる可能性を秘めているとも言える。“博士の学位取得にふさわしい、より高度で独創性のある薬剤師分野での新しい研究…”であるとすれば、医療(臨床)の現場の中にも研究課題は豊富に存在すると筆者は考えているが、6年制課程の延長線上での“タコつぼ”的な発想のみでは限界があろう。薬学ほど広範で日々進化する総合科学的学問は例が少ないが、関連領域についての広範な知識と融合的発想が常に求められる。そのためにも従来の大学院(修士+博士)課程との間に垣根を作らず、交流を積極的に行うことが、相互に有益であると考えられる。

 

 紙数の関係で詳細な紹介は省略するが、S県立大学が高齢化時代を迎え、今年度から大学院を改編し、薬学と食品栄養科学の学際的領域における人材育成を担う「薬食生命科学総合学府」を設置し、薬食生命科学専攻(博士3年)を新設したことが国内外から注目されている。予想されるセルフメディケーションの時代に、漢方薬や薬と食の相互作用などエビデンスに基づく薬剤師の指導的役割は益々重みを増すであろう。創薬的発想にも資すると期待されている。 欧米の薬剤師像を求めるだけでなく、日本独自の誇りある新薬剤師像も追究したいものである。「新博士課程」がその役割を果たすことを期待したい。