2026年7月
日本ジェネリック製薬協会
理事長 河野典厚
私事ながら、最近、長年遠くで一人暮らしをしていた母に近隣の施設に入ってもらいました。母はこれまで通院に難儀を感じていたところ、慣れない新しい環境下においては、医師や薬剤師が自分のところに来てくれることをいち早く喜んでくれました。普段から母は数多くの薬を飲んでおり、その大半はジェネリック医薬品。「一包化」も大変ありがたいことですが、ある日、母は日頃から感じていた素朴な疑問を廻ってくる若い薬剤師にぶつけました。「なぜ毎回こんなにたくさんの薬を飲まなければならないのか」。きっとその薬剤師は「これは何の薬」「これは何の薬」「だからきちんと飲まなければならない」と教えてくれると私は予想していましたが、その薬剤師は母だけでなく施設の看護師や職員からも様子を聞き出し、各診療科の医師に減量可能な医薬品を提案し調整してくれました。その対応はごく自然なもので、結果として減らせた量はさほど多くなくても母はそこまでしてくれたことに感激し、以来、その薬剤師をとても頼りにしています。
失礼ながら当初私が予想していた範疇から薬剤師が踏み出すには、知識も経験も必要だろうし、忙しい中での時間確保は難しい、医師との軋轢も気になるだろう、などと勝手に思っていました。しかしながら、その薬剤師が一歩踏み出してくれたことにより、母は安心して新しい環境下で過ごすことができ、家族としてもとても感謝しています。薬剤師として目の前の患者と向き合い、必要な情報を収集し、何ができるかを考え、個々の医師同士では調整困難な処方全体の最適化を担う、このような場面は薬剤師としての存在意義・やりがいに密接につながるのではないか。その若い薬剤師には、医療に貢献していることを実感していただきつつ、医師やコワーカーとの信頼醸成、ご自身の経験値の向上、そして何よりも患者・家族の笑顔と信頼の獲得に喜びを感じていただけたらうれしい、こんなことを感じました。
この原稿を書いている春のこの時期、フレッシュな薬剤師が期待と不安を胸に、各病院や調剤薬局等に配属されていると思います。医療関係者である限り「生涯勉強」が求められますが、薬剤師としての初心をいつまでも忘れずに、そして研修や実践を通じ、患者のための「一歩」を自然と踏み出すことができる、患者・家族の笑顔と信頼を糧にすることができる、そのような患者にとっての「身近な薬剤師」を目指してほしいと願っています。