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薬剤師研修支援システム

 時代の変化に対応できる薬剤師  

2023年12月

厚生労働省保険局医療課 薬剤管理官 安川 孝志

 

 薬学教育6年制がはじまって10年ぐらい経過した頃、薬剤師政策を担当する部署に配属になりましたが、薬学教育の「現実」を知って驚きました。

 薬学部・薬科大の新設が続き、入学定員が増大したが、定員を満たさない大学が結構あること。入学しても留年・退学する学生が多く、卒業時には卒業できる学生を「操作」して新卒の薬剤師国家試験合格率の高さをアピールする大学があること。6年生は夏には卒業研究を終え、その後は国試対策予備校のようになる大学が多いこと。しっかり学生に教育をしている大学も多かったですが、こういう姿が目立ちました。また、薬学教育と薬剤師免許取得後をみると、卒前・卒後の対応がバラバラに動いているように感じました。令和3年6月にとりまとめを公表した「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」では薬学教育から免許取得後のキャリアパスまでを一体的に議論していただきましたが、国家資格である薬剤師の養成はこのような視点が重要と思います。

 薬学教育は来年度からカリキュラムが改訂され、医学や歯学と共通のカリキュラムも導入されます。医療人としての養成課程が共通の考え方の下で作られる意義は大きいです。免許の種類は違いますが、それぞれの資格法の第1条では「国民の健康な生活を確保する」ことが共通事項となってます。卒前・卒後を一体として考えた薬剤師養成が進むと思います。

 これからの日本は人口減少が急速に進み、医療需要は地域によって大きく異なることが予想されています。医薬分業が進んだ結果、薬剤師は医療保険を重視した業務にシフトしていますが、将来的には患者自体が減るので、感染症予防を含む公衆衛生の対応や、セルフケア・セルフメディケーションの対応など地域住民のファーストアクセスとなる業務も重要になります。薬剤師は薬物療法に限らず、様々な専門性を高めていくことが必要です。

 また、今後はオンライン資格確認やマイナ保険証、電子処方箋など医療DXが進みます。デジタル技術の活用で医療の効率化や質の向上が期待され、薬剤師としては様々な患者情報が把握できるようになりますが、これは非常に画期的なことです。一方で、これらの情報を活用して患者の安全を守る責任が生じるので、情報を使いこなすための日々の自己研鑽が不可欠です。

 時代の変化に対応できる薬剤師は、これからも国民から信頼される専門職であり続けると思います。