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薬剤師研修支援システム

 我が国の医療DXへの薬局・薬剤師の貢献に期待します  

2023年11月

日本製薬工業協会専務理事 森 和彦

 

 2023年9月13日に「医療DX推進のための厚生労働省と薬剤師・薬局関係団体との意見交換会」が開催されました。この意見交換会には日本薬剤師会、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会等が参加し、マイナ保険証と電子処方箋が本格導入された最初の年の調剤現場の状況が紹介されています。医療の質の向上を目指して、我が国でも政府が定めた工程表に基づき2023年度から医療DXが進められる中で薬剤師の仕事の現場でもマイナ保険証、電子処方箋、電子お薬手帳を活用した体制作りが本格化しています。工程表の全体像は内閣官房の医療DX推進本部のホームページによると、全国医療情報プラットフォームの構築を2023年度から2026年度の4年をかけて構築することになっており、これから数年の間に急速に医療現場での仕事が全国共通の情報基盤に基づき行われるようになる見込みです。その中でも2023年1月から電子処方箋を医療機関が発行し、薬局がこれに基づく調剤を行う動きが先頭を切って進められています。薬剤師の仕事が紙に書かれた処方箋に基づいて行われるのは遠からず過去のやり方になり、本来の継続的、網羅的な患者の薬物療法のフォローが正確な情報に基づき行われるようになるはずです。

 これまで電子カルテを導入している病院や診療所では薬剤師もチーム医療のメンバーとして患者の病歴、治療歴を踏まえて薬物療法の設計、調整にも積極的に関与するようになって来ていましたが、今後はさらに全国医療情報プラットフォームに基づき地域包括ケアのシステムの中で患者をフォローすることが可能になります。薬剤師の仕事も薬物を含めた治療歴の全体を地域の薬局でも医療機関と連携・把握しながら薬物療法を継続する患者に寄り添って行えるようになります。さらに薬局で得られた患者の薬物療法の経過に関する情報を医療機関の医師等にフィードバックすることでより大きな地域ぐるみのチーム医療が実現できるようになると期待されます。

 医療DXの推進は、超高齢化・少子化が進み、あらゆる分野で働く人手が不足し始めている日本の医療を持続可能な仕組みにするための切り札ではないかと考えます。その中で薬剤師にも情報システムの理解やシステム関係機器の操作知識といった技術面だけでなく、個人情報保護制度や情報セキュリティーに関する見識を養い、全ての患者やその家族から信頼され、頼られる存在となるまたとないチャンスです。そのために今後の薬剤師教育の中にDXへの対応に必要とされる内容が充実され、実践的な卒前卒後の研修も必要だと考えます。豊かな臨床の知識・経験を積んだ薬剤師が医療DXに積極的に関心を持ち、更なる研鑽を積んで活躍する未来に期待しています。