戻る

薬剤師研修支援システム

 高まる漢方薬・生薬認定薬剤師への期待 

2022年8月

     一般社団法人日本生薬学会 会長 小林義典

 

 超高齢社会において、要介護状態やフレイルを予防・改善することが喫緊の課題となっており、現代医学だけでは対処できない病態や愁訴に対する漢方への期待が高まっています。一般用漢方処方は、2012年の改正で、いわゆる210処方が294処方となり、「単味生薬のエキス製剤の開発に関するガイドライン」(2015年)の策定以降この規格を満足する一般用医薬品も上市されています。薬局製剤指針(2016年)では全420品目中漢方製剤が236品目、生薬製剤と合わせると7割を占めます。医療用漢方製剤は全148処方中第18改正日本薬局方収載数が37処方となりました。診療ガイドライン掲載の漢方処方の数は2021年で112処方にのぼります。そして、これら数多くの漢方・生薬製剤を活用できる薬剤師への期待は益々大きくなっています。

 日本生薬学会は漢方薬および生薬に関して、服薬指導や適正取り扱いなど薬学的管理を的確に行える薬剤師の養成を目的として、2000年4月より日本薬剤師研修センターとの協力体制で「漢方薬・生薬認定薬剤師制度」を開始しました。日本生薬学会は、座学研修の講師の選定やカリキュラム編成、テキストの編纂、試問要領の作成および薬草園観察実習の受け入れ、研修認定制度に則った研修会の開催などを担当しています。本制度で認定された「漢方薬・生薬認定薬剤師」は、専門業務分野においてあるレベル以上の能力と適性を持っていることを試問等により確認し、その能力を証明された薬剤師を指し、認定されたことで、患者や処方医師に自信を持って漢方薬・生薬に関する情報提供ができます。また、「漢方薬・生薬認定薬剤師」であることを、認定証掲示やIDカード着装により、患者や他の医療従事者にアピールすることもできます。

 近年のコロナ禍やシステム切替え等の影響で諸々の運営上のトラブルを生じ、皆様方には多大なご不便をお掛けしましたが、これを機に各種関連団体との協力体制の重要性を再認識し、生涯にわたり自己啓発を続け、漢方・生薬の専門職としての能力を保持し続けようとする薬剤師個人や団体の活動を支援すべく、研修プログラムを充実させ、本認定制度の意義と信頼をさらに高めるべく努力する所存です。2021年12月末現在3,000名を超える方が認定薬剤師となっていますが、今後も多くの方々に漢方薬・生薬研修会を活用していただければ幸いです。