2022年6月
一般財団法人日本医薬情報センター 会長 村上貴久
コロナ感染症の蔓延が始まってから、もう2年以上経つ。2022年4月現在でも一日の新規感染者数は5万人を超え、累積感染者数は600万人を超えた。
小康状態の現時点では冷静になっているが、一時は感染拡大の不安は大きく、入院病床の逼迫、医療従事者の不足、ワクチン調達の遅延等が社会問題化していた。
対面による感染症の診療は医療従事者にとって危険が伴うこともあり、この間、オンラインによる診療を許容する動きが一気に広がった。昨年4月から既に条件付きでオンライン服薬指導が認められていたが、本年4月からは、初診再診を問わず、制約なく実施できるように省令改正が行われた。また、リフィル処方箋も導入され、症状が安定している患者であれば医師の診療を受けることなく薬剤の処方を受けることができるようになった。5月からは、新技術実証試験の名目でOTC薬の自動販売機が設置されると仄聞する。
必要に迫られての制度の変更であればいたしかたないと思うが、これらの動きが政府の規制改革会議やデジタル臨時行政調査会など、本来医療はどうあるべきかについて議論していない機関からの提言によって進んでいることに一抹の不安を覚える。
医療事情は世界各国で異なる。10km以内に医者もドラッグストアもない国もあれば、日本のように、近隣にかかりつけ医、かかりつけ薬局を求めることができる国もある。
今や医療の対面原則を言うと時代遅れと言われそうであるが、医療資源が充足している場合であれば、医療は対面で行われるべきと思う。対面によってこそ得られる患者の心の平安があるのではないか。
一方、医薬品に関する添付文書等の情報はますます充実し、それを理解するのは患者にとって難しくなっている。このような状況の中で、薬剤師の果たすべき役割はますます重い。