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薬剤師研修支援システム

 図書室 

2022年5月

     専務理事 浦山隆雄

 

 薬学部には、大学の図書館の分館として位置付けされた図書室があった。当然のことながら、薬学関係の書籍や学会誌が収集されていた。

 大学院生のとき、同じ研究室の同期生が、実験に行き詰まったと言って、図書室に2週間くらい籠もり、来る日も来る日も文献を調べていた。やがて、今後の方針が見えてきたと言って指導教官と話し合いをし、また実験に取り組む日々となった。その成果を見ずに私は就職したが、その後、彼は研究職に就き、しかるべき地位に達した。

 彼は着実に成果を上げていたと思っていたが、それでもうまくいかなくなることがあった。しかし、そのようなときに、うまい対応ができていた。成果がないにも拘わらず指導教官に頼りきりだった私とは、取組み方が異なっていた。私は研究を続けなかったことを悔いてはいないが、彼は自ら努力することの重要性を教えてくれた。

 当財団では、薬剤師研修・認定電子システム(PECS)を構築し、本年4月から本稼働した。ようやく歩みを始めたシステムであり、不十分なところは多々ある。しかし、一から構築したシステムが、ほぼ思いどおりに稼働することは不思議な感じがする。薬剤師の登録ができない、ユーザIDとパスワードを入力したがログインできないなどの電子メールが何通もくると、システムが円滑に稼働しているのかという疑問が湧きかけるが、何も言ってこない多くの人たちが、確実にシステムを使用している。実施機関登録申請や認定申請など、すでに多くの申請がなされている。

 今、何であっても電子化が進んでいる。コロナ禍でさらにその流れが加速した。医療分野では、遠隔診療はもはや当然のことになり、電子処方箋も間近である。人と人との直接的な繫がりで成り立っていたこの分野も、IT技術の介在が普通になっている。「当薬局では電子処方箋は受け取れません」が通用しない世の中は目前である。

 かつて親しんでこなかったものだから、年齢を重ねているからなどという言いわけは通用しない。うまく使えないのは仕組みが悪いからだと言っていても、何の解決にもならない。不得意であっても、うまくいかないように思えるものであっても、努力して取り組んでいくしかない。

 PECSの利用も同様である。多くの薬剤師が取り組んできている医療分野の電子化の流れのなかに、PECSが位置を与えられることを願っている。