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薬剤師研修支援システム

 厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」での議論から 

2021年10月

一般社団法人薬学教育評価機構 理事長 西島正弘

 

  この検討会の目的は、我が国において一層の少子高齢化や人口の地域差が進む中、また、かかりつけ薬剤師・薬局の推進、医療機関におけるチーム医療の推進など、薬剤師に求められる役割が大きく変化している中、これからの薬剤師の養成や資質向上等にどのように取り組むべきかを検討することでした。筆者はこの検討会の座長を務めましたが、毎回、活発に議論が行われ、今後の薬剤師に求められる役割とそれを実行できる薬剤師の養成等について、数多くの貴重な提言がまとめられたものと思っております。以下、その幾つかを紹介させていただきますが、全体については公表された「とりまとめ」を是非お読み頂きたいと思います。

  薬剤師の養成については、入試の厳格化や入学定員の抑制を求める意見が多数出されたことを受け、将来的には薬剤師が過剰となることが予想されるため、また教育の質の向上のために、適正な入学定員数のあり方や仕組みを早急に検討・実行すべきであるとされました。薬学教育については、コミュニケーション能力、臨床や在宅医療に関する内容、感染症など公衆衛生について更に充実すべきとの意見や、最新の臨床現場の理解と研究能力を有した臨床薬学系教員の確保が必要との意見が提言としてまとめられています。国家試験に関しては、基礎科目を薬学共用試験のCBTで代行し、臨床に関する問題を中心とすべきとの意見が出されました。

  薬剤師の資質向上に関しては、卒後研修と生涯研修の重要性が取り上げられました。臨床実践能力を担保するには、取得直後の医療機関や薬局での臨床研修(卒後研修)を卒前・卒後で一貫した中で行う必要があるとの発言が多数ありました。また、薬剤師を取り巻く様々な変化に対応するためには、免許取得後も常に自己研鑽に努めて専門性を高めてゆくための生涯研修の重要性も指摘され、薬剤師認定制度認証機構の認証を受けた日本薬剤師研修センターなどの研修のより一層の活用が提言されています。

  今回の検討会でとりまとめられた提言は、今後、厚生労働省、文部科学省、薬剤師関連学会、学会等の各方面で早急に検討・実施されることが必要です。10年、20年先に求められる薬剤師の養成と資質向上に向けて、多方面で活躍される薬剤師の方々のご理解と積極的な提案や取り組みを期待いたします。