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薬剤師研修支援システム

薬物療法のプロとしての薬剤師の皆様へ - PMDAからの期待 

2020年8月

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 理事 新井 洋由

 

  独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、医薬品等による健康被害救済はもとより、医薬品、医療機器等の承認審査、安全対策を担う日本で唯一の組織です。私は、アカデミアと行政の架け橋としての役割を担うつもりで、東京大学退官後の平成31年(2019年)4月からPMDAの審査センター長/レギュラトリーサイエンスセンター長となり、令和2年(2020年)4月にはPMDAの理事に就任しました。大学では、薬剤師を含む薬学教育と研究に携わってきましたが、PMDAではより実地の医療を意識した業務が行われています。まず、実地の医療の中で薬剤師が負っている薬物療法に関する責任をサポートする情報を正確かつ迅速に提供していくことがPMDAの使命と実感しています。

  特に、私が担当している新医薬品、新医療機器等の承認審査においては、審査報告書、添付文書、リスク管理計画(RMP)をはじめとして、新しい製品を提供する上での品質、有効性及び安全性に関する情報を発信しています。これらの情報は、世の中で最初に提供される製品の評価資料となるものですので、新たな薬物療法を安全かつ適正に実施していただくにあたり、薬剤師の皆様には薬物療法のプロとして是非、読んで理解して実践してほしいと考えております。これは薬剤師の生涯教育の一環とも捉えられるべきものと思います。また、 PMDAとしても、現場で情報を伝えていく薬剤師の皆様の期待に応えられる情報を発出していけるように審査や安全対策の質の向上、審査員の教育にも力を入れていきたいと考えています。

  同時に、安全性情報などを薬剤師の皆様にも積極的にPMDAにフィードバックいただきたいと思います。さらなる適正使用のために分析すべき情報のソースとして、医療機関での情報収集や副作用等の報告を担っておられるのも薬剤師の皆様です。薬剤師の皆様とPMDAが協調して現場の薬物療法の質を向上するために取り組んでいけたらと思います。

  さらに、PMDAでは、日本国内のみならず、世界の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の向上にも取り組んでおり、先に紹介した審査報告書の英訳をはじめ、英語での情報発信にも努めています。世界の医療の質的な向上のための橋渡しができるように、アジアなども意識した展開を目指していきたいと考えています。